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背景
コンクリート舗装においてはシーリングとひび割れ補修は一般的な維持作業である。水や非圧縮性の物質が進入するのを防ぐため、あるいは隣接の舗装を補強するために特別の材料をひび割れの中あるいは上に用いる。現在のひび割れ処理の設計、施工について、SHRPとFHWAはこれまでにもない努力でひび割れ処理の有効性の調査を強力に進めるべく、資金を出した。ひび割れ処理のモニタリングと評価はLTPP:長期供用性研究計画のもとで行われた。1991年の3月から8月にかけて、横断クラックのシーリングの試験箇所が4箇所、縦断クラックの充填の試験箇所が1箇所、アメリカおよびカナダに建設された。完了までに、6,710 mのクラックが評価のために選定された材料で処理された。
目的
クラック処理試験の主たる目的は最も有効で経済的な材料とクラックシールおよびクラック充填作業方法を見いだすことであった。副次的な目的としては供用性に基づく材料試験方法と速く、安全な施工方法を見いだすことであった。
本研究の主たる貢献
本研究はアスファルト舗装に用いるクラックシーリング材(シ−ラント)および充填材の供用寿命を明らかにし、より経済的な維持管理、道路作業者が交通の危険にさらされるのをよく少なくし、社会にはより少ない維持作業による遅れを可能にするものである。
試験計画
試験箇所は4つの気候の地域で普通の交通量のあるところに設定された。クラックシールの4つの試験箇所は以下の道路に設けられた。 | |||
・ | Interstate 20 | Abilene, Texas | 乾燥−不凍結地域 |
・ | State Route 8 | Elma, Wathington | 湿潤−不凍結地域 |
・ | State Rooute 254 | Vichita, Kansas | 乾燥−凍結地域 |
・ | Interstate 35 | Des Moines, Iowa | 湿潤−凍結地域 |
縦断クラック充填の試験箇所は下記である。 | |||
・ | Highway 401 | Prescott, Ontario | 湿潤−凍結地域 |
評価
6年半の間に10回の評価が行われた。評価にあたっては以下のパラメータが用いられた。
・ | 風化 |
・ | 抜け出し |
・ | Overbandの摩耗 (辞書にない) |
・ | トラッキング |
・ | 押し出し噴出 |
・ | 石の入り込み |
・ | 付着切れ |
・ | 引張力、せん断力による混合物の分離 |
・ | 気泡による混合物の分離 |
・ | 端部の劣化 |
供用寿命の比較
この研究全体を通じて、損傷などに関して数多くの高度な検査が行われた。こうしたことから、現場での供用性は75%の効率レベルになるまでの時間として定義される供用寿命として表すのが最適ということになった。言い換えれば、供用寿命は25%のクラックが破損状態に至るまでの時間ということである。
効率レベルというのは単に破損レベルを100%から差し引いたものである。(すなわち、全体で10%が破損していれば90%の全体効率であるということである。)
評価 | 効率レベル(%) |
---|---|
非常によい | 90〜100 |
よい | 80〜89 |
普通 | 65〜79 |
悪い | 50〜64 |
非常に悪い | <50 |
観察された損傷の多くは、処理のその機能を果たす能力の減少を表していた(例えば、水や非圧縮性の物質がクラックの溝に入れないという・・)。このような損傷の例としてあげられるのは、深さ方向に部分的に付着が切れていたり、分離いたり、Overbandが摩耗していたりということである。損傷のうち全深さに至るような抜け出し、付着切れ、分離などは、その機能が破損したということを意味する。この後者の損傷は破損損傷と呼ぶことにする。各処理について観測された破損損傷の量が供用性比較のペースになっている。
主な所見
・ | 61種類の処理にうち、32が評価の最終ラウンド後に破損した。 |
・ | 8種類のクラック充填のうちの半数は最終評価の後も良好であった。 |
・ | 全体として、クラックの動き量が多く交通量の多いところでは処理の効率レベルは、クラックの動きが少なく、交通量の少ない所よりも低かった。 |
・ | 処理の破損の主たるものは付着切れと結合ロス(分離)であった。 |
・ | 最も経済効率のよい処理は大体において、標準的かバンドエ−ド式(末尾参照)の浅い溝にゴムアスファルトを入れたものであった。 |
・ | 標準的な窪みのバンドエ−ド式が最も長い予測供用年数を示した。そのすぐ次が浅い溝のバンドエ−ド式である。 |
・ | 通常の動いているクラック(水平の動きで2.5〜5 mm)で普通の交通レベルでの短い期間のクラックシールの供用性(1〜3年)については標準的なゴムアスファルトを単純なバンドエ−ド式で入れるのがよい。 |
・ | 上の条件で中期的なクラックシールの供用性(3〜5年)については、標準的なゴムアスファルトを溝のあるバンドエ−ド式で入れるか、改質ゴムアスファルトを単純なバンドエ−ド式で入れるのがよい。 |
・ | 上の条件での長期的なクラックシールの供用性(5〜8年)については、改質ゴムアスファルトのシ−ラントを標準または浅い溝のバンドエ−ド式で入れるのが良い。 |
・ | 動きのないクラック(水平方向に2.5 mm以下の動き)で交通量が普通かより少ない場合は、アスファルトをフラッシュフィル方式(日本の普通の方法)で入れるのがよい。 |
・ | 上の条件で長期的なクラックシールの供用性(5〜8年)については、アスファルトゴムあるいはゴムアスファルト(?区別している)をフラッシュフィル方式あるいはオーバーバンド方式で入れるか、繊維入りのアスファルトをオーバーバンド式(末尾参照)で入れてもよい。 |
・ | クラックシーリングおよび充填作業の品質管理の重要性は決して誇張しすぎではない。品質管理で決定的なのは目的と、実地の検査者である。 |
item | 75%の効率レベルに達するまでの平均的月数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
クラック処理材料 | 処理方式 | テキサス | カンサス | ワシントン | アイオワ | オンタリオ | 平均 |
日交通量 10,000 | 日交通量 27,000 | 日交通量 19,000 | 日交通量 14,000 | 日交通量 19,000 | |||
Meadows Hi-Spec | A-2 | - | - | - | 57 | - | 57 |
A-3 | 58 | 43 | 118 | 61 | - | 70 | |
B-3 | 78 | 59 | 120 | 82 | - | 85 | |
C-3 | - | 56 | - | 88 | - | 72 | |
D-3 | 48 | 30 | 120 | 39 | - | 59 | |
D-4 | 44 | 29 | 95 | 42 | - | 53 | |
Crafco RS 515 | B-3 | 109 | - | 120 | 112 | - | 114 |
C-3 | - | 80 | - | 95 | - | 88 | |
D-3 | 58 | 33 | 118 | 45 | - | 64 | |
Koch 9030 | B-3 | 111 | - | 120 | 106 | - | 112 |
C-3 | - | 68 | - | 113 | - | 91 | |
D-3 | 45 | 24 | 120 | 51 | - | 60 | |
Meadows XLM | B-3 | 86 | - | 120 | 114 | - | 107 |
C-3 | - | 70 | - | 112 | - | 91 | |
D-3 | 48 | 29 | 119 | 59 | - | 64 | |
Kapelo BF+AC | D-3 | 9 | 6 | 105 | 19 | - | 35 |
Dow 890-SL | E-5 | 54 | 48 | 109 | 72 | - | 71 |
Crafco AR+ | B-3 | - | 52 | - | - | - | 52 |
Koch 9000-S | B-3 | - | 56 | - | - | - | 56 |
Elf CRS-2P | G-4 | - | - | - | 6 | - | 6 |
Crafco RS 211 | B-3 | - | - | 120 | - | - | 120 |
H-4 | - | - | - | - | 74 | 74 | |
AC | G-1 | - | - | - | - | 42 | 42 |
G-4 | - | - | - | - | 42 | 42 | |
Crafco AR2 | D-4 | - | - | - | - | 98 | 98 |
G-4 | - | - | - | - | 86 | 86 | |
Hercules FP+AC | D-4 | - | - | - | - | 79 | 79 |
Witco CRF | G-4 | - | - | - | - | 43 | 43 |
Hv-Grade Kold Flo | G-4 | - | - | - | - | 35 | 35 |
平均供用寿命 | - | 62 | 46 | 116 | 71 | 62 | 71 |
1.用いられた処理方式:
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参照文献
| 加熱空気ランス
|
クラックシールの処理方式についての詳しい説明がFHWA-RD-147にあったので、その記述と図を以下に示します。
フラッシュフィル型 | :単に材料をそのままの溝切りしていない、ひび割れに材料を流し込み、余分な材料をこそげ取るものである。 | |
溝切り型 | :ひび割れに溝切りした中にのみ、材料をあふれ気味か、もしくはわずかに舗装面より低く、なるように流し込む。 下図の D, F, H, J,および K 溝切りありである。 | |
オーバーバンド型 | :溝切りしていない、ひび割れの中および上に材料を流し込み、このあふれた材料をスキージ(写真参照)でバンド型に仕上げると、単純バンドエ−ド型になる。しごき込まずにそのままにしたものが、キャップド型ということになる。(下図C) | U型に仕上げるスキ−ジ(squeegee) |
複合型 | :ひび割れに溝切りした中と上に材料を流し込むものである。 溝を中心にしてスキ−ジでしごいてバンド型に仕上げる。 下図の E, G, I, および L は複合型である。 | |
1. 材料投入方法 | ロータリー・インパクト・ラウター(溝切り機)
| ||
a. | ひび割れの中に直接材料を入れる。 | ||
b. | ひび割れに溝切りし、三側面の接着を防ぐよう、材料投入の前に溝の底に接着防止の裏込め材をおく。 | ||
2. 溝のタイプ | |||
a. | 溝切りしない | ||
b. | ラウタ−(写真参照)あるいはソ−(写真参照)で均一な溝を形成する。 | ||
3. しごき取り、あるいは 仕上げの方法 | |||
a. | くぼませる。 | ||
b. | あふれさせる。 | ||
c. | ふたをする。 | ||
d. | バンドエ−ド式 | ||
4. 溝切りおよびオーバーバンドの寸法 | |||
ほとんどのシーリングないし充填作業はひび割れ溝に直接材料を流し込む(A型〜I型)。しかしながら、時に、ポリウレタン製の裏込め棒のような接着防止材料がシ−ラントを入れるに先だって、動きのあるひび割れの溝の底に設置される(J型、K型、L型)。この裏込め棒はシ−ラントが施工の際にそれ以下に流れ込まないようにすることを防ぐとともに、溝の周面と3面で接着しないようにする。その結果、シ−ラントの供用性がよくなる可能性がある。 | |||