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はじめに
LTPPの長期的な目標の1つは舗装の供用性の予測の精度を上げるために必要なデータを得ることである。供用性の予測は舗装の設計と管理の効率化のための決定的な要素であるが、その予測を行うためのモデルの不正確さと入力データのバラツキの大きさという問題がある。最終的な目的は、交通、環境、材料特性などと考慮した、損傷を特定できる信頼のおけるモデル類である。これらのモデル類は信頼できる良質の舗装損傷の計測によってのみ開発できるものである。
LTPPでは統一性のある損傷データの収集とその解釈が確実にできるよう、損傷判定マニュアルの制定とその改訂、あるいは目視評価者の研修など、いくつの手段を講じてきた。しかしながら、定量的にデータの偏りや精度などの評価をシステム的に行った例は、目視調査によるものについてもfilm-derived*によるデータについても見られない。こうした観点から、目視調査による損傷データのばらつき、film-derivedによる損傷データのばらつきの評価および、目視調査とfilm-derivedによる調査との一致性の評価に向けた研究がLTPPの損傷データによって行われた。完全なレポートは、LTPP損傷データのバラツキ(FHWA-RD-99-074,September 1999)にあるが、本短信では目視調査で得られたのバラツキに絞って報告する。
* 今のところ、このfilm-derivedの方法についてはわかりません。国際舗装工学論文集第1号にVariability of Film-Derived Pavement Distress Dataという題名の論文があることは分かっていますが、手元にはありません。多分、路面に透明フィルムを置いて、ひび割れを写し取る方法かと思いますが。実はうちの研究所でよくやっています。手間のかかる方法ですが、機械よりは信頼がおけるのでしょう。機械が正しいかどうかは、これを元に判定しているようです。
元データ
目視調査による損傷データのばらつきの評価に用いたデータは9つのLTPPの目視評価者研修グループ(以後、グループと称する。)などの119人により、18の訓練用舗装試験区間(9つはアスファルト舗装、9つはセメントコンクリート舗装である。)で得られたものである。同一試験区間について同一の日に1研修につき6人-9人の評価者が評価した。これらの18の試験区間について、各訓練の直前に研究の指導官により、共通の評価方法により参考のための評価が行われ、この研究では、基礎となる真のデータに代わる参照値として扱われている。
全体的傾向
ある損傷タイプに対する各損傷程度の損傷の量とすべての損傷程度の量とをプロットして目視による損傷データのばらつきの全体的傾向を見た。これによって見られた主な観察事項は以下の通りである。
舗装状態指標
損傷データのバラツキは今に始まったことではない。このバラツキを見やすくするために、舗装状態指数(PCI)*をこれらのデータについて計算してみた。この単一の複合数値で見ると、すべてのタイプと損傷程度の組み合わせについて、個々の評価者と、グループ平均、それに参照値とはよく一致している。グループ平均と参照値との差は9つの研修グループのうちの6で 6 PCI 以下である、残りの3では14以下であった。この複合数値で見た場合、評価者の個人差もやはり小さく、標準偏差は9のグループのうちの5で 5 PCI 以下であり、残りの4のグループでは 8 PCI 以下であった。
* このPCIが何なのか分らないと、差が大きいとか小さいとか言っても何とも判断できかねますが、アメリカ工兵隊の Pavement maintenance Management for Parking Lots, Technicaal Report M-294, October 1981が参考文献としてあげられていますが、ASTM D5340-98として規格化されています。目視で各種の舗装の損傷を総合的に評価して、減点法により100点満点で採点するもので、なかなか、一口に言えない定義です。損傷例の写真、減点を決めるための曲線など、50ページにわたる評価法です。
偏差と精度
目視調査のバラツキを偏差と精度として数値化して、アスファルト舗装については表−1に、コンクリート舗装については表−2に示した。
損傷タイプ | 単位 | 損傷の程度 | 参照値 | グループ | |||
平均 | 標準偏差 | 変動係数(%) | 偏差 | ||||
疲労ひび割れ | m2 | 全損傷程度 (合計) | 14.2 | 16.5 | 6.2 | 38 | 2.3 |
わだち上縦ひび割れ | m | 全損傷程度 (合計) | 18.4 | 18.3 | 6.0 | 33 | -0.2 |
わだち外縦ひび割れ | m | 全損傷程度 (合計) | 75.0 | 70.7 | 14.7 | 21 | -4.3 |
横断ひび割れ | ヶ所数 | 全損傷程度 (合計) | 26.4 | 24.7 | 3.2 | 13 | -1.7 |
横断ひび割れ | m | 全損傷程度 (合計) | 44.3 | 44.6 | 4.2 | 9 | 0.3 |
損傷タイプ | 単位 | 損傷の程度 | 参照値 | グループ | |||
平均 | 標準偏差 | 変動係数(%) | 偏差 | ||||
角欠け | ヶ所数 | 全損傷程度 (合計) | 3.9 | 3.7 | 0.5 | 148 | -0.2 |
縦ひび割れ | m | 全損傷程度 (合計) | 7.5 | 7.0 | 1.6 | 22 | -0.5 |
横断ひび割れ | ヶ所数 | 全損傷程度 (合計) | 9.4 | 9.6 | 1.4 | 15 | 0.2 |
横断ひび割れ | m | 全損傷程度 (合計) | 24.8 | 25.0 | 2.1 | 8 | 0.2 |
縦目地の角欠け | m | 全損傷程度 (合計) | 6.6 | 7.2 | 4.9 | 68 | 0.5 |
横目地の角欠け | ヶ所数 | 全損傷程度 (合計) | 3.7 | 3.4 | 0.9 | 25 | -0.3 |
横目地の角欠け | m | 全損傷程度 (合計) | 1.7 | 2.0 | 71 | 68 | 0.3 |
ここで偏差と表現しているのは参照値との対応するグループの平均値との差である。変動係数については「損傷の評価値が非常に小さいタイプのものがあるのを考慮して、標準偏差と平均値とをそれぞれの損傷タイプ、損傷程度の組み合わせについてプロットし、これらのデータに適合する0点を通る直線の勾配(%で表す)が標準偏差と平均値との比であり、変動係数(COV %)とした。」と訳のわからない説明があります。こんなことをこまごまと書くくらいだったら、ほかに説明をつけてほしいものもあるのですけど。グループ内の変動係数を平均する一つの方法だと思います。以下のようなことが変動係数のプロットと表から観察された。
推奨できること
この研究の結果から、いくつかの事項が研修、データ収集、LTPP計画の手順の再検討に生かされた。さらに、この偏差と精度に関して分った事項は、舗装の供用性の推計モデルに用いる、損傷のバラツキの定量化の第一ステップとなるものである。LTPP計画における推奨事項は以下のようなものである。