FHWA技術短信アスファルト舗装の補修後の供用性の経過
Comparison of Rehabilitation for AC PavementOctober/2000 FHWA-RD-00-165
FHWA Contact:Cheryl Richter,HRDI-13 (202) 493-3148
訳者注:用語はかなり乱暴な創作用語を使った部分があります。略語などは建設用語中辞典を参照して下さい。背景
LTPP計画の第一の目的は既設の舗装の補修、修繕に関する手法、戦略を改善することにある。この目的に沿った実験の一つがGPS (General Pavement Study) 6である。
このGPS-6の実験は、既設のアスファルト舗装上にアスファルト混合物をオーバレイした区間についてのものである。この実験はさらに二つに分かれており、GPS-6Aはオーバレイをする前に詳しい条件の調査を行っていない区間についてであり、GPS-6Bは詳しい調査を行った区間についてのものである。LTPP計画の中ではGPS-6Aの区間は60ヶ所、GPS-6Bの区間は65ヶ所ある。
この短信は1997年2月以来の125の試験区間についての損傷に関する収集データに基づいてGPS-6の実験の結果をまとめたものであり、広い範囲の条件をカバーしている。オーバレイの経年数は0.1〜26.4年(平均では7.3年)であり、交通量は年間で10〜1,900 KSALで、平均 300 KESALになっている。対象とした損傷
供用性の評価には疲労ひび割れ、わだち部の縦ひび割れ、非わだち部の縦ひび割れ、横断ひび割れ、わだち掘れ、IRIの6個の指標である。損傷の程度は比較しやすいように表−1に示す損傷レベルとして類別した。
表−2にはGPS-6の試験区間での軽度以上の損傷のある区間の百分率を示している。表−1 各損傷類型別の損傷の程度損傷の類型 | 軽度 | 中程度 | 重度 | 疲労クラック (m2) | 1〜10 | 11〜60 | >60 |
わだち部縦ひび割れ (m) | 1〜50 | 51〜160 | >160 |
非わだち部の縦ひび割れ (m) | 1〜50 | 51〜160 | >160 |
横断ひび割れ (数) | 1〜10 | 11〜50 | >50 |
わだち掘れ (mm) | <7 | 7〜20 | >20 |
ラフネス(IRI) (m/km) | <1.6 | 1.6〜2.4 | >2.4 |
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表−2 各損傷レベルのある区間数の百分率損傷類型 | なし(%) | 軽度(%) | 中程度(%) | 重度(%) | 疲労ひび割れ | 76 | 9 | 8 | 7 |
わだち部の縦ひび割れ | 61 | 30 | 10 | 0 |
横断ひび割れ | 40 | 25 | 27 | 8 |
非わだち部の縦ひび割れ | 52 | 27 | 17 | 4 |
わだち掘れ | 適用不可 | 67 | 33 | 0 |
ラフネス | 適用不可 | 79 | 17 | 4 |
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表−2によれば、GPS-6の試験区間の半分以上は疲労クラック、わだち部の縦ひび割れ、非わだち部の縦ひび割れは見られない。疲労ひび割れとわだち部の縦ひび割れ
GPS試験区間のうちの15%だけに軽度以上の疲労ひび割れが見られ、わだち部の縦ひび割れについては軽度以上のものが見られるのは10%のみである。以下に疲労ひび割れとわだち部の縦ひび割れについて観察される事項を要約する。・ | GPS-6Aのデータから見ると、交通量の予測に見合った舗装構造のオーバレイ設計であれば、10年以上は良好な供用性が期待できる。 | ・ | 疲労ひび割れとわだち部の縦ひび割れには関係があるという結論になる。特に、わだち部の縦ひび割れは交通荷重がかかり続けると、結果として広がって行き、疲労ひび割れに発展する。 |
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横断ひび割れ
GPS-6の試験区間のうちの35%では軽度以上の横断ひび割れが見られる。横断ひび割れは経年とともに増加する傾向があるが、いくつかのオーバレイでは長期間にわたって、まったくないか、極わずかしかなかった。以下に横断ひび割れの発生に関する全体的な観察事項を記す。・ | オーバレイの厚さが厚いほど横断ひび割れの発生は減少する。 | ・ | 横断クラックが発生した区間のデータから見ると、その量はオーバレイをする前の既設の舗装の状態によるようである。良好と分類される既設舗装上にオーバレイしたものは、非良好と分類された既設舗装上のオーバレイと同程度の横断ひび割れを生じるに要する期間は50%増しになっている。 |
・ | 60 mm以下の薄層のアスコンオーバレイでは経年数が横断ひび割れの発生に影響しているが、よりオーバレイ厚のものでははっきりした影響は見られない。アスコンオーバレイ厚が厚いほど、バインダと混合物の性状が重要になり、経年数はあまり重要でなくなる。LTPPのデータはこれらの事実を結論づけるには足りないが、矛盾するものではない。 |
・ | 横断クラックはある程度、低温によるものであると広く信じられているが、低温が一般的であるカナダの試験区間では横断ひび割れの発生量は特に変わりない。 |
・ | データから見ると、交通量のレベルはアスコンオーバレイでの横断ひび割れの発生には特に重要な影響はない。 |
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非わだち部の縦ひび割れ
GPS-6の試験区間のうちの21%では非わだち部に軽度以上の縦ひび割れが見られた。以下に全体的な観察事項を記す。・ | オーバレイ厚が厚いと、一様に非わだち部の縦ひび割れが小さく、発生も少ない。 | ・ | オーバレイの経年数とオーバレイ前の既設の舗装の状態は非わだち部の縦ひび割れに対する抵抗性という意味ではほとんど供用性に影響しないように思われる。しかしながら、オーバレイ前の舗装に非わだち部の縦ひび割れがあったことが分かっているオーバレイの45%では、リフレクションクラックの早期の発生に抵抗することに成功している。 |
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わだち掘れ
GPS-6の試験区間の35%ではこの研究でいう軽度以上のわだち掘れ深さが見られた。以下に全体的な観察事項を記す。・ | 層厚の厚いオーバレイはわだち掘れに対する抵抗という点では薄層オーバレイに勝るわけではない。 | ・ | わだち掘れの予想には交通量のレベルが重要ではあるが、材料特性や施工技術、品質管理などのほかの影響の方が恐らく、もっと重要である。 |
・ | わだち掘れは全国的な問題であるが、このLTPPの試験区間ではあまり深刻な問題にはなっていない。事実、舗装の損傷としてのわだち掘れに関するかぎりでは、LTTPの試験区間はわだち掘れを生じない舗装の代表である。このゆえに、LTPPはわだち掘れしない舗装の設計に関する情報ないし、わだち掘れがなぜ生じるかを説明するデータを提供できるのである。 |
・ | LTPP計画の大多数のアスコンオーバレイについてはわだち掘れのために修繕が必要になるまでには、年間の交通量が10〜1,877 KESALの場合で少なくとも15年以上かかると思われる。実際、1997年以来LTTP試験区間では、ひどいわだち掘れは数えるほどしか計測されていない。 |
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ラフネス
GPS-6の試験区間の21%でこの研究で言う軽度の値を越えるIRI値を示している。以下に全体的な観察事項を記す。・ | 建設時に特に平坦性が悪くなかった舗装についてもアスコンオーバレイの施工によってかなりのラフネス値の低減が得られる。 | ・ | 薄層でも厚い層でも長期的にラフネスはコントルールできる。言い換えれば、オーバレイが普通かかなりひどいレベルの平坦性の舗装に行われた場合でも、薄層と厚い層といわず、多年にわたってラフネス値の増加は軽微である。 |
・ | LTPP試験区間の、既設の舗装の状態はオーバレイの当初のラフネスには長期的なラフネスの変化についてもほとんど影響しないように思われる。 |
・ | オーバレイ区間の交通量あるいはESALは明らかにラフネスの変化あるいはIRI値の増加に影響するが、重交通であっても15年〜それ以上の期間、平坦性を保てるオーバレイを施工することは十分に可能である。 |
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全体の要約と結論
LTPPのデータベースに入っているアスコンオーバレイの大多数は明らかに荷重によると荷重によらないとを問わず、15年以上にわたって修繕が必要なまでの損傷を生じていない。もっと重要なのは、20年以上の供用で軽度の損傷以下しかない試験区間が多数見られるということである。これらの区間については、その材料、交通量および気象データが得られれば、さらに観測を続けることに大きな意味があろう。 この研究および他の研究から、わだち掘れとラフネスの問題はひび割れに比べれば扱いやすいように思われる。データによれば、わだち掘れとラフネスのコントロールは施工の時点で良いか悪いか決まる。アスファルト混合物が適切にわだち掘れに抵抗し、相応の密度で施工されれば、早期の永久変形はわずかであり、将来にわたって軽微であろう。同様に、オーバレイに用いた材料がひどい永久変形に生じにくく、比較的平坦に施工されれば(IRI値で約 0.8 m/km)、その供用寿命期間を通じてひどいラフネスにはならないであろう。
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