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ケルトの伝統行事・インボルクをご紹介します。この記述はIoA Knowledge Bank(リンク切れ)にSig Lonegrenという方が書かれたインボルクの項をだいたいのところ忠実に訳したものです。かなり哲学指向の高い著者なので、ついて行けない部分があります。この方の書かれた著作はほかにもあり、http://www.geomancy.orgに行くとGeomancyという中部大西洋に古くからある占いとかストーンサークルなどに関する興味深い記述があります。
 Imbolcの綴りと読み方ですが、こうした関係がご専門の橘青洲先生からImborg:イモルグというのもあると教えていただきました。

茶色の文字は私の勝手な想像で何の典拠もありません

 はじめにケルト人の暦についてふれておきます。

 ケルトの暦は太陽暦の一種です。太陽は1年に四つの明確な節目をつけます、Quarter Dayと呼ばれる、冬至、春分、夏至、それに秋分です。ケルト人は1年を、この四つの節目の間に4つの Cross Quarter Dayを挿んで8つに区分していました。およそで言うと、11月1日が Samhain私の辞書によるとサーウェンとかサーウィン、この記述の参考にしたサイトの記述によるとサウアン:Sow-an、ベルテン火祭り協会では Samhuinnという綴りも示されており、私としてはサーウィンをとることにします。)、2月1日が Imbolcインボルク)、5月1日が Beltane(ベルテインとかベルテン)、8月1日が Lughnasadルーナサド)です。Imbolcと Lughnasadは私の使っている辞書には 記載がありませんので、発音は勝手読みです。この暦では何月何日という日付の呼び名は考えにくいようです。日付のシステムがどうなっていたか興味のあるところです。


ケルトの魔女の暦の一年
 
 サーウィンは1年の区切りの日であり、1年のはじめでもあり、おわりでもあるということですが、お正月の方に近いのでしょう。実はその前夜にはいろんな精霊が飛び交うといわれており、それがハロウィーン、Halloweenなのです。この日はキリスト教の時代になってからはAll Saints Day(諸聖人と殉教者の霊をまつる日)と重なります。多分、キリスト教の布教者が地元の風習をキリスト教風に換骨奪胎しようとしたのでしょう。Hollowmasと呼ばれた時代もあり、masはミサのことですから、そのへんの事情が読みとれます。この頃には秋の収穫もおわり、冬に向けて種まきも終わっています。蒔かれた種はインボルクまでは眠ったままです。実はこのインボルクはキリスト教の時代になって聖燭節、ろうそくミサ、Candlemasと重なったというか重ねられたようです。
 このインボルクがきて初めて種は活動し始めます。このへん、日本の啓蟄(3月6日ごろ)の日と関連があるようです。こちらは冬ごもりの虫たちが這い出てくる日ということですが。じ多分、虫はすべての生き物を代表しているのだと思いますが、ここで言う種も生き物、全体を表していると考えられます。時期的には節分にあたりますけど。
 5月1日のベルテンの頃になると芽も出終わり、稔りの豊かさが大事になってきます。そして8月1日のルーナサド(これもキリスト教の時代になって、Lammas( 収穫祭、カトリックでは聖ペテロの鎖の記念日)に置き換えられたようです。)、収穫がはじまります。そしてサーウェンには収穫を終えなければなりません。そうして、また新しい1年のサイクルが始まります。 冬至、春分、夏至、それに秋分などの Quarter Daysが冬、春、夏、秋のはじまりだとすると、Cross Quarter Daysは、各季節の真っ盛りということになります。この記述の参考にしたサイトの記述によれば、古い人は " you should have half your hay and half your wood by Candlemas (Imbolc)"、つまり、冬の蓄えの半分以上をインボルクまでに使ってはいけない。インボルクは一番寒い季節にあたり、まだ、あと半分の冬があるということです。こうした土着の原始宗教を懐柔していくやり方はかなりのところ、成功して、Imbolcと Lughnasadは私が持つような辞書には載らなくなったということでしょう。ハロウィーンとある意味、一番たのしいベルテンは消し去ることに成功しなかったということです。日本では宣教師のこうした試みは成功しなかったのでしょう。何しろ、八百万(多分、無限の意味でしょう)の神様がいて、どこの神様でもおうように仲間にしてしまい、「クリスマス、それっていいね」と何でも受け入れてしまうという文化ですので。でも釈迦が「天上天下唯我独尊」と云ったときには日本の神様達は腰を抜かしたのではないでしょうか。「まあ、そういう奴もいるさ」と受け流していたわけですが、キリストがきて、神仏を否定しようとしたとき、あの壮絶な島原の殉難になったのではないでしようか。

 さて、インボルクですが、この日はケルトの火の女神、ブリジッド(Brigde、輝くものという意味で、またの名を Brigid、Bride、Brigantiaといいます。)の聖なる日なのです。この女神は太陽の女神でもあり、健康と鍛冶を統べ、芸術の霊感と技を統べ、収穫と家畜、自然を統べるということで、かなり守備範囲の広い神様のようですが、中でもヒツジが子を産む、この季節には重要な役割をもっていたようです。 ヒツジが子を産みはじめるとインボルクが近いということです。また、女神・ブリジッドにとってミルクは重要な意味があり、Glantonbury山にある塔の南西側のドアには彼女が乳をしぼる姿がみられるそうです。

 もう一つ、インボルクの付近の日の行事として Groundhog's Dayというのがあります。私の辞書によると2月2日、ところによって2月14日ということです。Groundhogというのはあいまいな言葉で、辞書を引くとウッドチャック:woodchuckというハムスターに似た感じの動物あるはaardvarkというアリクイの仲間であったりします。私は2月14日という日にちと冬ごもりする動物という近似性とからモグラを思い出してしまいます。日本では「もぐらうち」という行事が、今でも田舎では保存されていると言った方がいいのですが、あるからです。豊穣を祈る行事という意味であることは共通しています。 このウッドチャックだかが、この日、 穴から出て, 自分の影を見ればさらに 6 週間の冬ごもりに引き返すとの伝説があり、多分、アメリカのアイルランド系の人の多い一地方でしょうが、この日が晴れならば、さらに寒い日が続き、曇りなら春が近いと占うようです。
 インボルクとの関係ですが、いずれも天候の占いに通じているという共通点があります。キリスト教で、神様を父 (Father)神の子 (Son)とか聖霊 (Holy Ghost)と三つの呼び名を用いますが、女神の文化では彼女を聖処女 (Virgin)母 (Mother)、とか豚 (Hog)しゃくちゃ婆賢女 (Wise woman)などと呼び分けるのではないかというのが、参考にしたサイトの著者の意見です。豚は神様に失礼のような気がしますが。Hogは pigと違ったもっと可愛い動物なのかもしれません。私の辞書では豚としか出てきません。 インボルクの儀式では聖処女として現れます。下に示すのは、このブリジッドに捧げる、可愛いお祈りです。

聖ブリジット様に捧げます

聖なる雌牛の処女様、
私の小さな牧場を祝福しておくれ
牧草と日陰をつくる木々を。
バターとチーズを祝福しておくれ。
雌牛には絹のコートを授けておくれ、
それに、あふれるほどのミルクも。
生け垣も祝福しておくれ、それにお願い、
土の下の種も祝福しておくれ。
干し草と草たちを祝福しておくれ。
これからの季節を祝福しておくれ。
そしたら、天の恵みが地にあふれます。
ブリジッド様、ゲール人のマリヤ様。

 ゲール人というのはスコットランド、アイルランド、マン島のケルト人を指しますが、スコットランド高地人だけを指すこともあるようです。

 この、お祈りではブリジッドは聖母マリヤと同一視されていますが、やはり、インボルクの女神であり、家畜と土の下でやっと芽生えはじめる種の女神です。

 ここからは、参考にしたサイトの著者のかなりオカルト的な私見が入っているとおもいます。

 貴方の胸の中には何が蒔かれているでしょうか? それは冬の間、眠り今起き出そうとしています。貴方のこれからの生活にかかわるを感じられますか? 何か現実に現れたりすることを? それらは貴方の胸の中の土の被いの下に横たわっていませんか? こんな苗をこれからの年月、どう、はぐくんでいけばいいのでしょう? 

 インボルクはこうした問いをするときでもあります。それは何らかの儀式の形で行うと霊験あらたかでしょう。それは一人でもできるし、友人を交えてでもいいでしょう。まず、四方を囲む、聖所を作って床に円を描いて、セージの香を焚くとか、とにかく貴方がやりやすい場所を作ります。インボルクの日にはブリジットは、そうやって彼女を呼べば、その場所にくるのです。この著者はそうやって、何度さがしても聖ブリジッドに捧げることに関する本が見つからないときに「ブリジット、ここに来て本を探すのを手伝って!!」と叫んだようですが、結果のほどは書いてありません。

 四つのQuarter Daysはケルトの火祭りの日として知られています。そして、それぞれは古代哲学の四つの元素(土・気・火・水)のうちのどれかが支配しますが、インボルクはが支配します。 それは未来を見つめるときです。二月、春を前にして深呼吸し、これからの年月のことに思いをはせます。 貴方は、胸の内で芽生えつつある部分をどう守り育てていくかを考えてもよいでしょう。占いには四つの元素のどれを使ってもいいけど、水は未来を告げます。洗面器に水を張ってテーブルの上に置きます。そして部屋を暗くして水に見入って下さい。ロウソクを使うといくらか反射があっていいかも知れません。そして貴方の胸の内の種について考えるのです。水に見入るときは目の焦点はさだめずに。(このサイトの著者は45°の角度から見るそうです。 )何かを探したり、見つめたりしていけません。いずれにしても、それは身体的な目では見えないのですから。何かが来ても気を楽にしておきます。何かを見た、と思うかも知れませんが、それが何かが聞こえる前兆かもしれません。注意して。飛び上がったり「すごい!」などと叫んだりしないように。 じっと静かにして、貴方の内心にもっと何かが入ってこれるようにします。 貴方はただ、あるイメージを見るだけかも知れないし、映画のように見て聞けるかも知れません。あるいて単なる感じとして来るかも知れません。

 そうして水の中に未来を見たら、種のことを、貴方が未来に向けて蒔いたものについて考えます。それらについてどんな連想が出来るでしょうか? それらは、たがいに符号しますか? 貴方は今年がどんな年であるか感じがつかめましたか?

 こうしたことをすべて終わったら、ブリジットに感謝し、彼女を解放するときです。最後に、貴方が作った聖所を離れます。

 これが、ただ一つ、簡単なインボルクを祝う方法です。このサイトの著者は、こうしてブリジットインボルクのことを考えてウェールズの友人たちといっしょ一昼夜を過ごし、いろいろな不可思議なことが生じるのを見たのだそうです。女性達はウェルシュ城にある自然のトンネルにある聖なる井戸に行き、男達は薪を集めて火を焚いて、インボルクのことをいろいろと語り合ったのだそうです。


ここまで書いてきたこととは、かなり違う趣ですが、ベルテン火祭り協会(Beltane Fire Association)ベルテンだけでなく四つの火祭りの保存も試みています。その協会が2001年2月に催したインボルクの組写真を協会の承諾を得て紹介します。ストーリーはあるらしいのですが、今のところ、断片的なキャプションしかなく、おぼろげにしか全容はつかめませんが、頭休めにご覧になってください。

インボルクの祭りの様子


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