カレヴァラの主人公、ヴァイナモイネンをご紹介します。 ヴァイナモイネンが、果たして神なのか、人なのか、難しいところです。彼は、世界最大の叙事詩・ヴァイナモイネンの主役を務めます。カレヴァラについては、改めてページを起こしますが、古来からの伝承が、各地でバリエーションを生じていて、それをロンルート Rnnrotという人が、長い年月をかけて収集したものに、彼独自の解釈を加えたのが、世に言うカレヴァラなのです。私が、今、参考にしているのは下のサイトですが、カレヴァラ異説という感じのところもあって、話が見方によっては、まったく違い、別の見方では細部が非常によく一致しています。このページでカレヴァラと言うとき、それは世に言うカレヴァラを指すことにします。 ここで参考にしているのは、主として下記のサイトです。 http://www.finnishmyth.org/ | |
ヴァイナモイネン ヴァイナモイネンはカレヴァラの中では、イルマリネンとは友だち付き合いのようです。したがってイルマリネンが神なのなら、彼も神ということになります。しかし、カレヴァラの中では、イルマリネンは確かに、不思議な力をもった鍛冶屋ですが、神という扱いではなさそうです。で、ヴァイナモイネンの方の扱いは、とにかく超人に違いありません。なにしろ、母、イルマタール:Ilmatar:水の母の胎内に七百年もの間、いたのですから。イルマタールは大気の神:イルマ:Ilmaの娘で、風によって処女懐胎したということで、人にしても由緒正しいわけです。最高神 ウッコに祈ったりするところは人です。 今、私が見ているサイトではヴァイナモイネンは、ふとしたはずみで、天地創造をやってしまいます。とにかく、カレヴァラの主人公なのですから、英雄には違いありません。そして、何よりも私にとって親しみ深いのは、女にモテない英雄なのです。お前様もだか?というわけです。これはカレヴァラでも同じです。どのくらい、モテないか?というと、彼と結婚させられそうになった娘が入水自殺するくらいなのです。カレヴァラを通じて、つくづく女運のない英雄です。いきなり、七百歳になって生まれてくるのですから、仕方のないことかも知れません。 英雄ですから強いのですが、彼の主たる武器は歌、つまり歌を通じた呪術です。別のサイトによれば、彼はフィンランド最初の吟遊詩人で呪術師とあります。フィンランドの人は歌、音楽が大好きのようです。フィンランドの伝統的な祭りを探してネットで検索したところ、無数の音楽祭が出てきて、ちょっと閉口しました。カレヴァラの中でも彼が剣を使うのは魚相手、といっても妖怪みたいな奴ですが、そいつをやっつけるだけです。あとは、船のかい、で、妖怪の鳥の爪をぶったたくくらいです。
天地創造 この話はカレヴァラと、大きく話が違うところです。細部は一致していますけど。今、見ているサイトによれば、こちらの方が正調、少なくとも古い、ということです。
最初は宇宙には原始の海があっただけのようです。ヴァイナモイネンはどこで生まれたかはわかりませんが、とにかく、この原始の海を漂っているうちに、ふとしたはずみで、海に底を作ります。つぎに浅瀬と深みを作ります。それから、これもふとしたことで、卵の産み場所を探していた鷲が、かれのひざの上に金の卵を産みます。それが、あまりにも熱く、思わず、ひざを動かして、卵は落ちて、割れてしまいます。結果、卵は粉々になりました。下の方の殻から、大地ができました。上の方の殻からは天空ができます。白身からは太陽ができました。黄身から月が、そして、ほかの、ばらばらの屑からは星ができました。これが全ての始まりというわけです。 カレヴァラによれば、卵は海の中の、水の母、イルマタールの膝に産まれます。鳥は鷲だったり、鴨だったり、いろいろバリエーションがあるそうです。フィンランドの神々をご覧になった方は、えっ、天地はイルマリネンが打ち出したんじゃないの?とおっしゃるかも知れません。でも、そう、突っ込まれると話は進まなくなります。伝承の中にはそういうのもあるのです。確かに、カレヴァラの中でも、彼は太陽と月をつくります。失敗に終わるのですが。彼は、作れ、と言われれば何でも作ってしまうようです。 宇宙の構造 そうやって出来た宇宙の構造はどうなっていたでしょうか?
大地の上には蒼穹があり、それを支える柱があります。この柱は世界の真ん中にある大きな木、あるいは山だということです。この柱が北極星につながっていて、その周りで宇宙が回転します。北極星は'noth pin'と呼ばれていて、柱の上に天空がピン留めされているわけです。その下は死者の下世界・ツオネラ(Tuonela)ということになっています。 生あるものの大地はツオネラ川 (Tuonelan virta 原語)に囲まれています。それが生あるものの大地と死者の下世界との境になっているわけです。この記述だと、死者の世界の方が宇宙の中心に近いようです。 この川は、はるか北にあるポホヨラ村 (Pohjola)、天空と大地とが交わるところで、死者が下世界へと渡ることになります。ポホヨラの手前には、no-man`s-landというのがあって、そこは鳥たちの世界のようです。 |