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 いよいよ、フィンランドの叙事詩、カレヴァラの紹介、話のはじまりです。

 カレヴァラ(カレワラ)は世界最大の叙事詩と言われています。誰の作かは詮索しようもないくらい、古いもののようで、各地で語り部が部分、部分を伝承して、無数のバリエーションを生じていたものを、ロンルート Rnnrotという人が1828年から1939年の間、8回にもわたって長期の収集の旅をして、ある程度、つじつまが合うようにまとめたものです。
 ここで参考にしているのは、主として下記のサイトですが、ロンルートのカレヴァラとは必ずしも一致していません。どうもこのサイトの作者は異説・カレヴァラにこだわっているようなのです。内容的にはカレヴァラの中とほぼ、一致しているのですが、部分を取り出して、しかも端折って要約版みたいなところもあり、また、順番は、まったくの順不同という感じなのですが、世に言うカレヴァラの順番に並べ替えてみました。最初の詩は、作者の創作かも知れません。
 さし絵は作者の友人の Nils Hedlundという人が描いたものですが、最近(2011/02/26) Gallen-Kallela の描く「カレワラ」として 印象的な場面を描いたものを見つけましたので紹介しておきます。

http://www.finnishmyth.org/

ヴァイナモイネン

バイナモイネン、老いてなお、毅然たる、
彼の在りし日は過ぎさった。
ヴァイノーラの甘やかな牧草のある所、
カレヴァラのヒースの地は広がる。
そこで彼は甘美な歌をうたい、
歌をうたって、その知恵をあらわした。
そのしらせは遠くはこばれ、
その言葉は潮となって異国にまで広がる、
ヴァイナモイネンの歌のしらせが、
英雄の知恵のしらせが。

by Nils Hedlund
 まずは主役を務めるVinamoinenの自己紹介です。ほかに準主役を務める人は数人いますが、彼が断然主役です。

by Nils Hedlund
ペレボイネン

ペレボイネン、土から生まれた、
サンプサ、一番ちびの少年、
種まきにきた、不毛の地に、
まわりにいっぱい種を撒きながら、
中腰になって、種を撒くために、
陸地の上や、沼地の上に、
平たい土地にも、砂地の土地にも、
そして、かたい岩の上にも。
岡の上には、松の木の種を撒いた、
小山の上には、樅の木の種を、
そして、砂地の上にはヒースの種を、
谷間には葉っぱの多い苗木を。

 ヴァイナモイネンが誕生した時は大地には何も生えていませんでした。
 ヴァイナモイネンは、ノームのPellervoinenを呼び出して種を蒔かせます。Sampsaは彼の別名です。その後も舟を作る木が必要なときにも、木と問答しながら探してくるのは彼です。植物のことなら彼です。

ヨウカハイネンとの歌合戦
 (女にモテないヴァイナモイネン)

 主たる物語はここから始まります。若くて傲慢なJoukahainenは、ヤクザみたいにヴァイナモイネンに喧嘩を吹きかけます。勝負は歌合戦、呪文合戦です。結果、ヨウカハイネンは泥沼に投げ込まれて沈みそうになります。そこで、あれをやるから、これをやるから、と助けを求めるのですが、最後に妹を嫁にやる、というのでヴァイナモイネンは喜んで助けてやります。
 ところが、彼女 Ainoの母は喜ぶのですが、アイノは「あんなジジイはいや!」と、ついには入水自殺してしまうのです。ヴァイナモイネンは、悲しんで何日も泣き明かしたあげく、彼女が白鱒になったと聞いて、銀の釣り糸で釣りに出ます。ほんとに釣れたのですが、あざけりの言葉とともに逃げられてしまいます。ヴァイナモイネンは何回か、嫁取りに挑戦するのですが、ついぞ成功したことはありません。それに泣き虫でもあります。この後でも出てきます。
 こうして、また彼が嘆いていると、彼の母、水の母ですが、墓から出てきて、「ポホヨラに行って一番いい娘をもらいなさい」と告げます。

ポホヨラの乙女

それからポホヨラの可愛い娘、
陸の上で名高く、水の上で比類ない、
選り抜きのドレスを取り上げた、
そして一番あでやかな上着を、
そして最後、五番目に選んだ、
そうして頭飾りを合わせて、
そして銅のベルトを巻いて、
そして素晴らしい金色のガードルを。
戻ってきた、衣装部屋から、
踊りながら戻ってきた、中庭に、
彼女の目は明るく輝やいていた、
彼女が動くと、耳飾りがなり、
そして彼女のお辞儀はたおやか、
そして彼女の可愛い頬はバラ色。
彼女の乳房の上では金が輝き、
彼女の頭では銀がきらめいていた。

by Nils Hedlund
 ここは異説・カレヴァラです。カレヴァラの中には、この場面は見つかりません。でも、美しいことには変わりはありません。

 そこで、彼はワラの馬に乗って、水の上を駆けて行きますが、途中でヨウカハイネンが待ち伏せしていて、馬を射ち倒します。またも、嘆きながら何日も浮かんでいるところを大きな鳥が来て、ポホヨラの岸辺まで運んでやります。この鳥はあるとき、森の木を伐るときに、鳥たちのためと言って、一本を残してやっていたのを覚えていた鷲です。
 異説・カレヴァラでは、漂流の途中で天地創造をやってしまいます。ですが、話が混線しますので、忘れることにして、世に言うカレヴァラの順序にしたがって話を進めることにします。
 そこでまた、何日も泣いていると、ポホヨラの乙女がそれを聞きつけて、母に知らせます。ポホヨラの女主人 ロウヒ Louhiです。

by Nils Hedlund
ポホヨラの女主人 ロウヒ
ロウヒ、ポホヨラの老いたる女主人、
答えた、次のような言葉で、
起ちなさい、おお、男よ、干潟から、
英雄さんよ、ほかの道を探しなさい、
さあ、話してごらん、お前様の不幸を、
そして語りなさい、お前様の冒険を、
この英雄を泣きやませた、
船の後ろに座らせた。
 Louhiは悪名高い、九つのやまいの生みの親ですが、この場面ではやさしいばあさんです。その娘の方はみな、とびきりの美人のようです。
 ここで、ヴァイナモイネンは来意を告げるのですが、娘をただ、やるわけにはいかない、サムポ sampoを持ってきたら、やろう、と言います。彼女はサムポか何か知っているようです。

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