技術セッション 10Evaluation of Rutting Performance on the 2000 NCAT Test Track2000年のNCAT試験道路でのわだち掘れ供用性の評価
E.R. Brown, B. Prowell, A. Cooley, J. Zhang, R. Powell
Abstract NCATにある全長が3 kmくらいあるトラック型の試験路で4セットの3連トレーラーを2年間走らせた結果をわだち掘れに注目してまとめたものです。物量にものを言わせた、いかにもアメリカらしい研究です。アスファルトの等級、改質剤の種類、粒度:例の禁止ゾーンの上、下、中、などが、比較されています。別に実験計画法で設定はせず、金を出す各州、10州ほどの、それぞれの要望する混合物で試験したわけですが、結果としていろんな比較ができるようです。アスファルト量を0.5%、余分にした舗装もあります。路盤から下はすべて同じで純粋に基層から上が評価できるようになっています。これらで計測したわだち掘れと、試験室での試験結果からの予測値との比較が中心です。どれも相関係数は0.2以下という感じで高いとはとても言えない状況です。しかし、これと同等の試験路がネバダ州とミネソタ州にもあるわけで、いずれはかなりの結果が出てくるでしょう。アブストラクトはありませんので、結論の部分を訳しています。
結論
ここに示した結果とその解析から以下のことが言える。
- すべての試験区間での永久変形の量は極めて小さかった。永久変形は外気温が28℃では実質的に停止する。最初の夏の永久変形量にくらべて翌夏の永久変形量はかなり小さい。
- 交通下では、PG 64-22の軟らかいアスファルトを用いた混合物はPG 76-22の硬いアスファルトを用いた混合物よりも密度の上がり方が大きい。これは、高温用の硬いアスファルトでは、もう少しバインダ量を増やしても、わだち掘れ抵抗を犠牲にすることなく耐久性を上げられることを示している。予想どおり、PG 76-22を用いた中間層はPG 64-22を用いた表層よりも密度の増加は少なかった。
- 密度の増加から計算で求めた永久変形は、ほとんどの場合、実際の変形量を上回っていた。これは、ほとんどの試験区間の混合物が極めて安定であったということ、また、観測された永久変形のわずかの量しか密度の増加や圧密が主因でないことを示している。(これは不思議です。案の定、質問がありました。計測は簡単なdipstickと呼ぶ簡易型と自動でとる方法とワイヤを両端から張って行う方法があり、ワイヤ法が最も正しいと思われますが、最初の二つは相対的な計測になり、小さくなると思われます。ワイヤ法は手間がかかるので最後に行っただけのようです)
- PG 76-22を用いた区間の永久変形量はPG 64-22を用いた区間より60%以上少なかった。
- 粗粒度の混合物と細粒度の混合物の供用性はだいたい同じである。よってこの研究からは粗粒度の混合物も細粒度の混合物も永久変形については同様の供用性を持つと言える。
- PG 64-22を用いる混合物でバインダ量を0.5%、余分に加えると永久変形は約50%、増加する。しかしながら、PG 76-22を用いる混合物では0.5%、余分に加えも増加は見られなかった。
- くり返しえし荷重永久変形試験から得られるsecondary slopeと呼ぶ1サイクルあたりのひずみ量が最もよく最終的な変形と相関する。(R2=0.4264 相関係数にして0.65くらいでしょう)しかしながら、この試験は極めて変動が大きく、統計的な結論を得るには 3変数を超える場合は3個以上の同一供試体が必要になる。
- 動的モデュラス試験の結果は現場での変形とは無関係のようである。しかしながら、試験法はNCHRP 9-19の仕様とは違っていた。
- わだち掘れ量が小さかったので、多くの試験区間はさらに2年間残され、わだち掘れに関する評価がよりよくなされ、混合物の耐久性に関しても知見が得られることになろう。 議論では、あらかじめ準備された参考として、SSTで行うくり返しえし荷重永久変形試験(RSCH-CH)から得られるデータがわだち掘れと相関があるということの補強として、モニスミス教授からネバダのWesTrackのデータを用いて、一部、外れたデータをはずせば高い相関を得られるという資料が紹介されています。またテネシー大学の人から、NCATで行ったAPA test(ホイールトラック試験の一種)ではわだち掘れとの相関は低く出ているが、空隙率を4%でなく、7%にすると、相関が高くなる、NCATの供試体を持ち帰って調べたら、空隙率はだいたい7%だったと指摘がありました。どうも空隙率をあまり小さくするよりは大きくした方が良さそうです。怖いのは圧密ではなくて shear flowと言っていますが側方流動だということになりそうです。NCATの方からは4%のデータも7%のデータも、それほど相関に差があるようには見えないが?と答えがありました。この点に関してはかなり議論があるようです。
興味深い意見として、水浸ホイールトラッキングでは、わだち掘れに一番強い混合物が、一番悪い結果が出たというのがありました。この人は表面クラック、つまりわだち割れだと思いますが、これが水の影響に関係あると見ているようです。回答として、トップダウンクラッキングはまだ見られないが(2,3カ所はあったようです)、試験を延長して行う区間がかなりあるので、関連の知見が得られるようになるだろうということでした。
動的モデュラス試験については論文でわだち掘れとの相関が低いという結果でしたが、この点について、与えるひずみが小さいので、バインダのスティフネスだけが効いていて、骨材粒度などは関係なくなっているのでは?と質問があり、著者もほぼ同意のようです。
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