メールマガジン023号 トンネルはどうしてトンネル? 先月はとうとう発行せずでした。月半ばくらいまでは何とかしなきゃ、と寝入る前にタネを考えようと思うのですが、そう思うと不思議と寝付きが良くて、そのままになり、ついにまあいいや、何も義務ではなしと居直ってしまいました。 つれづれなるままに、と書きつづるほど人間が枯れていないし、様になる文章が綴れるわけでもないものですから、書くについては何かしら、人の耳目を驚かさないまでも、少しは耳新しいことを書こう、要するに奇をてらうのです。そうするとあまり行動的でもなく、古今の書を耽読するというわけでもない ぐうたら人間としては書くことがなくなるわけです。 結局、会社のホームページのアクセス、つまりどんな訪問者が何を見たか、どんな検索キーワードでどんな検索エンジンから来たか、ブックマークしてくれている人は何人くらい、どのページをブックマークしたのかなどの解析しているので、そこから出てくる情報が頼りということになります。 中でもどんなキーワードで来たか、というのはいろいろと参考になります。以前に干潮河川、観潮河川(感潮河川の入力ミスです。なかなか感潮には変換できません。)を話題にしましたが、えっ!、そんな用語はうちの HPにはないはずだが、とかいうことがあって、ときに慌てて調べて建設用語中辞典に収録したりします。 本題に入ります。 ある日、最近のことですが、「トンネルの語源」を探して来た人がいました。そんなものは書いてないし、えっ!、トンネルはトンネルでしょう。英語で tunnel タンネルが訛っただけでしょう!と思ったのですが、いや、タンネルがトンネルに訛るのは不自然だし、ひょっとすると、どこかの国で、考えられるのはポルトガルとかオランダなどの日本にゆかりのある国の言葉でトンネルという発音があって、そういう人たちがトンネルという言葉を持ち込んだのでは?と思い直して調べてみることにしました。 手元にあるのは英語の CD辞典、フランス語の CD辞典とドイツ語の紙の辞典ですが、調べると、どれも tunnelになっています。さて、ポルトガル語、オランダ語ですが、これはありません。そこで三つの方法、いや、結果的にそれ以上の方法を取りました。 一つはFree Online Translater 要するにタダで使える翻訳サイトで、これは英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、ロシア語、オランダ語、スウェーデン語、アラビア語、日本語、韓国語、中国語簡体字(本土)、中国語繁体字(台湾)など、14カ国語相互の翻訳が、150語までなら出来るというのがあります。このサイトは必ず、「おめでとうございます。999,999番目のビジターさん、あなたは賞金に当選しました。手続きをするには、ここをクリック」みたいなのが、ぞろぞろ開いてうるさいのですが、片っ端から閉じていって調べました。08/02/28 今はこの煩いのは止めたようです。全体の信用がなくなりかねないと考えたのでしょう。 調べると、どこも traforo(イタリア)とかはありますが、ほとんどは tunnelに近い綴りで tonnelみたいな綴りは見つかりません。 次に調べたのがオンライン・ウェブスター辞典です。この辞典は以前はそっけないくらいの機能本意のものだったのですが、今は商売熱心で、煩くポップアウト・ウインドウが開くようになりましたが、機能も強化されていて、語源について必ず触れてあります。そこで tunnelを引くと語源は「French tonnelle a semicircular, wagon-headed vaultとあり、古フランス語では tonnelで tonneという半円形の樽とか桶の小型のものという意味でtonneleになり、形が似ていることからトンネルもそういう名前になった」とありました。やっとトンネルらしいのに辿り着きました。 しからば、今現在、トンネルらしい発音を使う国があるのか? 今度はwikipdiaで tunnelを探し出して、20カ国語くらいの同じ項目のアドレスを見ると、tunel、tinneliとかの変化があるのと、独自の言葉として Rebour(ブラジル)、ハンガリーのマジャール語で Alagútとかありますが、tonnelみたいなのは見えません。ブルガリアとかロシアなどのキリル文字の国では%D0%A2%D0%BE%D0%BD%D0%BD%D0%B5%D0%BB%D1%8Cみたいになっていて皆目わかりません。とにかく、フランス、ドイツ、オランダ、北欧などの国は tunnelです。こちらではイタリアも tunnelです。どうも学術用語としては tunnelのようです。 次に試したのは tonnelで検索してどのくらいヒットがあるか?です。Googleで検索すると、216,000件がヒットします。tunnelの 59,600,000件には及びもつきませんが。実は Tonnelという名前の人がかなり居るのです。樽井さんみたいな名前なんでしょう。では tunnelと tonnelの両方を含むものを検索すると、904件ヒットします。これは日本のサイトでファイル名として tonnel.htmlなどとするものが多いので、それが上位に来ています。そこで「tunnel tonnel -.jp」として .jpのサイトを除外すると 763件になります。
それでも .comなどのドメインで日本語のものがあるので日本語がかなりあります。そんな中からまず目にとまったのが「Holland Tunnel. Or maybe HOLAAD TONNEL」という語句です。早速、そこへ行ってみます。そこで目にしたのが右の写真です。『やったあ!!』と思ったのですが、Aの下にはNが見えていて、ちょっとおかしいんじゃないの?と思わせます。 しからば!と今度は『Holland tunnel』で画像検索してみます。ちなみにホランド・トンネルというのは、ニューヨーク市のマンハッタンとハドソン川で隔てられているニュージャージー州ジャージーシティ市を結ぶ約 2,500 mの河底トンネルです。1920年から始めて完成したのは1927年です。上下線が別々のトンネルになっていて長さが少し違います。世界初の換気装置のあるトンネルです。その換気装置というのが直径 24 mもある換気扇らしいです。橋という案は航行する船舶のために水上 60 mまで上げる必要があって実現不可能と考えられたのです。この工事がまた大変で、河底ですから当然、水が湧き出てくるのですが、トンネル全体に圧力をかけて抑えながら掘り進めるという恐ろしいやり方をしています。つまり作業者はエアロックに入って、圧力に体を慣らしてから工事にかかるわけです。出るときも同じです。ホランド・トンネルという名称はこのトンネルの発案した技術者 Clifford Milburn Holland、彼は完成を見ることなく、41才の若さて亡くなりましたが、彼を記念して名付けられたものです。
ゴタクはこの程度にして、ほぼ同じ方向から撮った写真がありました。それが右の写真です。けっきょく、tonnelは飾り付けだったのです。ときどき、何を記念するのか、こうした飾り付けをするようです。残念ながらトンネルという発音とは関係ありません。Hollandはダッチと並んでオランダの別名の一つで日本人はこれを使っているわけで、オランダの出だろうと思います。 次に目についたのが tonnel = tunnelという記事があってこれは記事の URLが http://proto2.thinkquest.nl/~jrd265/taal.htmとなっていて、オランダ語と思われ、Zuid Africa つまりオランダ語で南アフリカに関する説明らしく、その中でオランダ語とアフリカーンス語の簡単な対照表があって、tunnelはアフリカーンス語では tonnelだ、とあるわけです。 南アフリカに最初に植民したのは南部のオランダ人で、その言葉と現地のスワヒリ語とか、マダガスカルなどを経てやってきたマレー語などが入り混じって、ついに一つの言語体系になったものですが、基本的にはオランダ語の文法のようです。植民当時のオランダ人が tonnelを使っていたのだと思います。今、現在、トンネルという発音が使われている国が少なくとも一つはあることが分かったわけです。 もうちょっと探すとビニールハウスの会社みたいなのの挨拶文が、英語とオランダ語みたいなのと併記で出ていて、tunnelと tonnelが併記されています。オランダ語なのか確認しようと、Free Online Translaterで単語のいくつかにあたると、オランダ語として英語に翻訳できるものもあるのですが、出来ないものもかなりあります。そこで、Tuinroeteと英語の Garden Route、これは南アフリカの希望岬付近の風光明媚な一帯のことですが、これをGoogleで検索すると Tuinroute、アフリカーンス語では Tuinroeteと出ていて、アフリカーンス語に間違いないと分かりました。 ではトンネルという発音は現在は南アフリカだけなのか? 実は「tunnel tonnel」で検索したなかに、Rや Kが裏返しになったキリル文字のサイトが多数ありました。これはどうにも読めません。そこで「tonnel」で画像検索をかけました。すると、人名に Tonnelがあるので人の写真もかなり出てきますが、トンネルの写真もかなりの数、出てきます。画像の名前が tonnel.jpgだったりするわけです。 これが URLから見るとロシア .ruが非常にたくさんあります。そのほかベラルーシ .by、カザフスタン .kz、ウクライナ .ua、ブルガリア .bg、アゼルバイジャン .azのドメイン名が見えます。 つまり、ロシアを中心とする東欧ではトンネルという発音だということが分かりました。ベルギー .beでは tonnelier これは桶屋みたいなの、オランダ .nlも見つかりました。オランダでも一部は使われているようです。この tonnelierの画像を見ると半円形なのかよく分からないところがありますが、蓋らしいものの形は半円形に近いようです。 Websterの辞典では この元の tonneという樽の容量が 252ガロンで、1ガロンは3.785 リットルですから 953.82リットルと 1000リットルにかなり近く、これが 1トン、2トンのトンの元になっているというのです。では tonneはどんなのか画像を探していると、wikipediaで元は tonneauだったとあり、下のような画像が出ていました。タンクローリーの原型みたいです。
半円形ではなさそうですが、こんなものだったようです。樽とか桶といったものはアーチとクサビの原理で出来ているので、多少は丸みが無いと、クサビが効かなくて形を保てないでしょう。 といった次第でトンネルという発音は日本だけでは無さそうだということは分かりました。画像を探しているうちに la tonneleとして下のような写真が見つかりました。して見るとフランスでもトンネルという発音はあるということになります。 |  |
では日本にトンネルを伝えたのはオランダ人だったのか? ちょっと「日本最古のトンネル」で検索をかけてみました。これはいろんな意味で日本最古があって、その地方の思いこみということもあって多数出てきますが、すでに調べてまとめた人がいて、現在も使用されている国道最古のトンネルでしたら…、 (1)明通トンネル(延長95m)1890年(明治23年)長野県東筑摩郡本城村の国道143号 (2)四町作第一トンネル(延長52m)1902年(明治35年)千葉県君津市の国道410号 (3)天城トンネル(延長446m)1904年(明治37年)静岡県賀茂郡河津町の国道414号 日本最古の道路トンネルは…、 (1)青の洞門(延長150m)宝暦13年(1763年)4月10日 大分県耶馬渓 日本最古の鉄道トンネルは…、 (1)石屋川トンネル(延長61m)明治4年(1871年)
http://www.106951.com/info/area/khis/kh15.html 現存するわが国最古の鉄道トンネルは…、 (1)小刀根トンネル(延長56m)明治14年(1881年) http://www.kepco.co.jp/wakasa/tanpou/tanpou/90/90.htm 日本最古のれんが造りの道路トンネルは…、 (1)鐘ケ坂トンネル(延長268m)明治16年(1883年)
http://www.geocities.jp/muraihiroyukijp/rengatunnel.html と出ていました。 その後の調べで静岡県志太郡岡部町の宇津ノ谷トンネルは明治九年に有料道路として完成しています。有形文化財として認定されていますが、建設に関わった施主に関する資料はありますが、技術面についての記録はないようです。 ではこれらのトンネルにオランダ人がかかわっていたのか? ジェトロ - 日本貿易振興機構 アジア経済研究所のサイトで詳しいことが出ていて、イギリス人がほとんどでオランダ人はかかわっていないようです。ですが、治水の関係ではかなりオランダ人が指導していたはずで建設用語中辞典に収録している粗朶沈床とかもオランダ人が考案したものらしいです。 探してもオランダ人からトンネルを教わったという記事はみつかりません。ですが、イギリス人などが来て実際に西欧の技術でトンネルを造る以前に、蘭学という形で西欧にはトンネルという青の洞門みたいなものを大々的に作っているらしいということは知っていて、tunnelが、『ああ、トンネルか』ということになったのではないでしょうか? 長々と退屈様でした。これで書いているように順次良く調べが進むわけではなく行きつ戻りつで、なかなかの労作なのですよ。 佐藤渡辺サイトの近況 訪問者のアクセス状況は佐藤渡辺のアクセス公開のページで見ていただくとして、で紹介した「メールマガジン019号 比重、密度、単位体積重」のページは予想に違わず、連日、200名近くの人が来ているようです。この関係で悩まされている人がいかに多いかわかります。 狐と狸 福田さんは狐? 官房長官の時代から「この人は腹黒い人だな」と思っていました。田中真紀子さんに言わせると「抱きついて蹴り上げる人」らしいですが、年齢が同年ということもあり、戦前、戦中を知り高度成長にも関わったという意味で価値観も共有しているような気がして、この人なら安心して見ていられるかな?と思っていました。その福田さんが小沢さん相手に大連立という大技を繰り出すとは思っても見ませんでした。まあ、この人なりの計算はあったのでしょう。お陰で民主党がかなり揺さぶられました。 小沢さん、この人は狸? ここ 20数年くらいの政治は実のところ小沢さんの手のひらの上で動いているのかな? と思っています。風雲を巻き起こす力では天下一品です。1993年に新生党を作って細川内閣、羽田内閣を立ち上げ、手は下さないものの村山内閣が成立して社会党を見る影もなく没落、その後の政治の流れは、この人に動きがもたらしたもののように思います。まったく不思議な人です。何でこう風雲を起こすのか? 本人の信条、価値観は不動で、周囲がブレているだけなのかも知れません。(安倍さんだって本人は前から変わりはしないのに国民の方がブレたのでしょう。)傍目に見ているとえらくブレの多い人だなと思います。一度、首相にさせて見たい人ではあります。世界に風雲を巻き起こせるか? やはり小泉さんみたいにアメリカ親分に尻尾を振ることになるのかな? 家の話 アサツキがそろそろ、冬眠に入りそうです。2ヶ月くらい毎日、納豆、みそ汁の薬味、サラダにも切り込んでと大活躍でした。とにかく雑草みたいに強くて、ますます増えるので家内が少し退治しようと言い出しています。そう根が深いわけでもないので、退治が大変ということもありませんが。アスパラガスの根っこには参っています。まったくスコップが立ちません。それでも取れたての味は格別なので、別の場所でほそぼそと今、育てています。 高菜の 5代目くらいが芽をだしてきたので 4本を植え替えて育てています。最後に花を咲かせておくと、どこからともなく生えてきます。
07/11/14発行 165部 先号+2部 毎回、4、5通が宛先不明で戻ってきます。三回連続で不着になったらリストから削除しています。2、3を削除しますが、だいたい同じくらいの新規申し込みがあって、同じくらいの発行部数になっています。 目次へこのホームページの更新状況などのお知らせをご希望の方がありましたら、下記の申し込みのフォームでお申し込み下さい。私どもからのお知らせのほかに、「まりんにゅうす」というメールマガジンも届くことになります。 |