メールマガジン No.48 ステンカ・ラージンの歌
9月、中頃のこと、各国の.jpとかのドメイン名に関する国別の記述の中に、国旗を入れることを思いつき、そのついでに、国旗の赤が何を意味するだの、血なまぐさいものが多いですけど、由来も書いて、さらに、ついでに国名の由来も書くか?、こんなことをしてたら、切りがありませんけど。時間の許す範囲で、少しずつ整備しています。国旗については国旗からどの国の旗か調べるためのページも作りました。 そうして、カザフスタンの記述にかかったとき、前々から、思っていた疑問が頭をもたげました。カザフスタンはカザック人の国らしいが、カザックとコサックは同じではないのか?コサックは人種なのか? 最初に私が知ったコサックは今を去ること、50年余、ゴーゴリ作「タラス・ブーリバ」のポーランドと戦うコサックたちです。カザフスタンはボーランドと戦うには遠すぎます。ネットで調べると、Kazakhstanの Kazakは英語の cossackと同じでコサックだとわかりました。 まわりくどく、カザフスタンはトルコ語のコサックを意味する quzzaqとペルシャ語の国を意味するスタンを組み合わせたもの、という説明がありましたが、ロシア語にもちゃんとあります。これが人種という意味で民族か?というと、そうではなさそうです。英語ですけど、意味は中世のロシアの軍隊について記したサイトがあって、人種ではなくて、封建時代の搾取を嫌って逃散してロシア南方に逃れた農奴で、基本的にはロシア人で、意味は 自由の民、とか、放浪の民といった意味なのです。住むべき土地がないのですから、遊牧、漁業、略奪がなりわいになります。 そうしたコサックは、その住むところによって、ウクライナ・コサックとか、ウラル・コサック、ドン河近くに住むのがドン・コサックで、カザフスタンのコサックはこの、ドン・コサックです。そこで思い出すのが、ドン・コサック合唱団、これは有名です。中でも印象に残るのが「ステンカ・ラージンの歌」です。流れるような美しいメロディーと、美しい響きを持ってもの悲しい歌詞です。ところが、この歌詞の意味はこれまで聞き流して、意味を考えたことはありませんでした。 まず、よく知られた与田準一訳による歌詞を示しておきます。1.くおんにとどろくヴォルガの流れ 目にこそ映えゆく ステンカ・ラージンの舟 目にこそ映えゆく ステンカ・ラージンの舟 2.ペルシャの姫なり燃えたる口と うつつに華やぐ 宴が流る うつつに華やぐ 宴が流る 3.ドンコサックのむれに今わくそしり 奢れる姫なり 飢うるは我ら 奢れる姫なり 飢うるは我ら 4.そのかみ帰らずヴォルガの流れ さめしやステンカ・ラージン 眉根ぞかなし さめしやステンカ・ラージン 眉根ぞかなし | |
ペルシャの姫が悪者にされているのは分かります。この姫とコサック、それにステンカ・ラージンにどんな関わりがあるのでしょう? そこで、意味を調べてみようと、またネットのお世話になって見つけました。いや、驚きました。実は歌詞は中抜きで省略されているのです。3番と4番との間にはこんな歌詞があるのです。 そを聞きステンカ・ラージン 舳先に立ちて 姫をば抱き上げ 雄々しく告げぬ これみよとステンカ・ラージン 姫をば差し上げ さかまく波間に 投げておとしぬ | |
ついでに園部四郎訳を示しておきます。島のむこうからかわすじへと、 川波の広がりへと 色鮮やかな舟々が漕ぎ出る ステンカ・ラージンの舟が 前の舟にはステンカ・ラージン 姫を抱いてすわっている。 新しい婚礼をいわって 彼は陽気に酔っている そのうしろにささやき声がきこえる− 《俺たちを女とかえてしまったよ、 たった一夜、女とすごしたら、 その朝にはまるで女になってしまった》 このささやきとあざけりを 恐ろしいアタマンはききつけた そして彼はたくましい腕で ペルシャの姫をつかまえた。 ヴォルガ、ヴォルガ、生みの母よ ヴォルガ、ヴォルガ、ロシアの川よ! お前は見たことはあるまい ドン・コサックの贈り物を! 彼は美しい姫を 一気に持ち上げると はっしと放り投げる 流れ去る波のなかに… 《何故、お前たち、そんなに沈んでいるのだ、 おい、フィルカよ、さあ、おどれ! 仲間たちよ、元気を出して 彼女の冥福を祈ろうよ… | こんな意味だったとは! 拉致してきて自分の女にして挙げ句の果てにドボン! よくも、よくも! ステンカ・ラージンは権力に立ち向かった英雄として、称えられているといいますが、ほんとなのか。よくも、よくも! こんなのを称える歌を作って称える文化とは? という気がしますが、そこでまた、ひねくれ者の私の考えでは、少なくとも、あのメロディーのもの悲しさからみると、作曲した人は、秘かにステンカ・ラージンを告発していたのではないか、という気がしています。 コサックは勇猛なのですが、住むべき土地がないのですから、遊牧、漁業、略奪がなりわいが基本で、勇猛ならざるを得なかったわけで、見方によっては悪党の群れ、使い方によっては、コサック兵のように優れた軍隊になり、シベリアの開拓に大活躍したわけです。そうした支配に従属しない、自由の民のコサックの英雄は、必然的に支配層に立ち向かい、タラス・ブーリバをはじめとして、ステンカ・ラージンほか、みんな、非業、かつ残酷な最期を遂げます。 ロシアの非情の文化の一端に触れた気がしました。ステンカ・ラージンの歌は、一般に歌われている歌詞と違う訳が「ロシア民謡の謎を追う!」にありますが、こちらの方が、飾り気がなく、これまで、美しい言葉の響きにごまかされていたようです。私としてはステンカ・ラージンの歌はステンカ・ラージンの告発の歌であれば、と思っています。話は違いますが、日本の能に玉取伝説を題材にしたものがありますが、私としては、藤原鎌足という権力者が、その子の出世を餌に海女を命をかけて竜から玉を奪わせるという、庶民にできる、非情の告発の一つの形式?と思っています。
「タラス・ブーリバ」のあらすじ http://www.shinkyo.com/concerts/i176-3.html
中世のロシアの軍隊(英語) http://www.suite101.com/print_article.cfm/6247/41991
ロシア民謡の謎を追う! もう少し詳しい事情が分かります。 http://www-h.yamagata-u.ac.jp/~aizawa/ryu/ono2.html
佐藤渡辺サイトの近況 というわけで、今月は世界の国旗のページを新しく作り、関連で、各国の記述も強化中というところです。 9月の画像を含まないページビューは336,745と新記録になりました。お盆休みみたいなのもなく、アメリカも日本も夏休みが終わって、学校関係が活発になってきたためです。 建設用語中辞典関係は、着々と強化しています。
世界の国旗と国勢 http://www.watanabesato.co.jp/wldculture/dnames/flags.html
小泉さん、今度は結果を見せてくださいよ。 まあ、予想に違わず、小泉さん、圧勝しましたね。今度の総選挙までは持つでしょうね。さて、これからです。今度はお題目だけでは、誰も納得しませんよ! ちゃんと結果を出してくさいよ。 構造改革は、何だか良さそうなのだけど、それでどうなるのか、青写真はまだ見せてもらっていませんが、ぶっつけ本番でいくのですか?
家の話
ゴボウの花を紹介しようと思うのですが、デジカメで娘に撮ってもらったのはいいのですが、ものの始末が悪く、だれも責任をとらないという、我が家において、目下、行方不明中で、今月中には探し出して、作者のページのどこかに紹介しようと思っています。 すみっこに植えてあった白の彼岸花、一輪だけ咲きました。昨年は咲かなかったので、もうダメか、と思っていましたが、彼岸花は、茎や葉はどこにあるのか、さっぱりわかりません。秋になると突然、花柄だけで出てきて、咲きます。実は春先にちょこっと、それも目立たない葉っぱが出るのですが、見落としてしまいます。お父さんが草取りの刈り取ってしまったんだろう、と家内に責められていましたが、一安心です。
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