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2005年度・AAPT・アスファルト舗装技術目次へ
技術セッション 09

Micromechanical Fracture Modeling of Hot-Mix Asphalt Concrete Based on a Disk-shaped Compact Tension Test

円盤形コンパクト引張試験による加熱アスファルトコンクリートのマイクロメカニカル破壊のモデル

Hyunwook Kim, William Buttlar

Abstract

 アスファルト舗装のひび割れは、元に戻らない構造上、機能上の欠陥であり、維持コストを増加させ、寿命を短くするものである。試験室でのアスファルトコンクリート供試体の破壊挙動の理解は、今のところ、ひび割れに強いアスファルトコンクリート舗装の混合物およびたわみ性舗装構造を設計する上での欠くことの出来ない手がかりである。
 この目的のため、ミクロ構造(micro-fabric:土質関係では使われる言葉のようですが、訳語にはお目にかかりません。多分ですが、要素が単に線形の応力、ひずみの関係でなく、除荷しても、ひずみは遅れて戻り、永久変形も残るといった粘弾性的な挙動をするような要素自体に、ある機構が組み込まれたようなFEMなのでしょう。)要素モデル(MDEM)によって二次元の粒子流のソフトウェアパッケージ(PFC-20)を用いて、アスファルトコンクリートの破壊において見られる複雑な挙動を研究した。
 この挙動を、総材料領域と材料間インタフェースを単純化した複合形態素を扱う MDEM(micro-fabric distinct element model、土質関係ではMississippi Digital Earth Modelというのがありますが、どう違うかはわかりません)を用いてシミュレートした。このマイクロメカニカルなモデルは、究極的には現場での応答や損傷予測を可能にし、温度ひび割れやリフレクションクラックのメカニズムに関する理解を深める「バーチャル・アスファルト試験室」の開発の第一歩と言えるものである。この MDEMは最終的には、同一のシミュレーション・モデルで舗装の全体の応答と局部破壊の挙動を考慮できるマルチ-スケールのモデルに用いられることになる。現在のところは、材料の設計、材料と舗装構造の最適化、それに実験室での材料検査の試験および予測評価に有用であり得る。
 PFC-2D(two-dimensional particle flow software package)へのバイリニア・粘着ゾーン(bilinear cohesive zone)の導入を検証するため、ダブル-カンチレバー・ビーム(DCB)試験を用い、MDEMの結果と閉じた形の(closed-form:数学用語のようです。)参考解とよい一致を見せた。つぎに、この MDEMによるアプローチを新しい円板形のコンパクトな引張試験(DC(T))でのアスファルトコンクリートの破壊挙動の調査に応用した。粘着モデルのパラメータ、限界変位ジャンプと破壊エネルギーは、比較的単純な等質の材料のモデルで、ひび割れの発生位置を先決めしたシミュレーションと関連させてキャリブレーションした。
 このキャリブレーションしたモデルを拡張して不均質な要素を用いたものとし、骨材のブリッジング(多分、かみ合ってアーチ作用を起こしたりすることでしょう)、ひび割れの回転とかクラックの枝分かれなど、より複雑な破壊メカニズムを把握できるようにした。
 均質のモデルも不均質のモデルもキャリブレーションはうまく行き、実験データと整合し、アスファルト混合物中でのひび割れの進行に関する新しい知見が得られた。しかしながら、この方法が真に正しいかは、さらに検証が必要であり、真の粘弾性のモデル化とか、モデル構築における画像処理技術の改良などが必要であり、さらに、実験室での計測が進めばこの、バーチャル試験室のアプローチの実用性を検証することができよう。

 円盤形引張試験の供試体を示しておきます。厚さは書いてありませんが、ジャイレトリーコンパクタで作った供試体、あるいは現場から切り取った供試体で試験できるということです。円盤に切り欠きをつけて、その両側に荷重を加える穴をあけてあります。トライアンドエラーで位置を決めたようで、最初は荷重用の穴から破壊したようです。


うまく破壊したものです。

こういう壊れ方もあります。
 左の図はMDEMによるシミュレーションの結果のようです。こうした不均質の材料を扱えるようです。クラックの位置は先決めしたもののようです。