ここに紹介するのは、健常者から、ある日、身体障害者になられた方のメールです。45歳働き盛りの2児の父親の方で、バリアフリーへの訴えを、力もない私に訴えられても、なすすべもありませんが、何人かの力のある関係者の目にとまれば、と、原文のまま、掲載します。ふだんは、バリアフリー、バリアフリーといっても、障害者の方にだって、健常者への思いやりがあっていいのでは、と考えたりしていますが、みんなが明日は我が身であるということも事実です。そのときになって、どう考えるか一つの参考になるでしょう。

現実味のない研修の積み重ね
(心身のバリアフリー研修はこうして行おう!?)

理学療法士 西沢 滋和


 巷では障害者などがエンドユーザーになるであろうあるいはなって欲しいが故に、その受け入れ体制をアジャストすべき、様々なバリアフリー研修が行われているようです。
 ところがその大半は研修を準備する人が健常者ゆえに内容がミスマッチを起こし、本来の意図とする研修が成就できていない様子が頻繁に伺えます。
 私は42歳の時脳卒中で倒れ数年所要し社会復帰させて頂いた2児の父親です。事前に付け加えさせて頂きます。
主に接客業ではその研修対象者が職員になるようですが、殊ハード面においても「これがバリアフリー環境の整備なのか?」と疑いたくなるような整備状況を垣間見てしまう光景に出くわすことが時々あります。
 対象者が健常者の場合で心のバリアフリーを除去しようと試みる研修の際も企画する人が健常者であるために、どうしても本来の研修の目的とはミスマッチしてしまう傾向が生じてしまうようです。
 車椅子利用者の更衣室がその場所にアジャストされていないのに、車椅子利用者の更衣手伝いの実地研修をしても何の役にも立たないのではないのでしょうか。まず車椅子の人でも気軽に試着ができる空間の確保が先に行われるべきではないのでしょうか。仏作って、魂をいれずに似た研修があまりにも山積しているような気がします。
 動機は問いません。せっかく様々な障害をお持ちの人に対して世の中の潮流が徐々にではあると思いますが受け入れていこうとする傾向が現れてきているようですから、この潮流を現実味のあるものに変化させた方がよいのではないかと思っています。
 そのために提言させて頂きたい幾点かを本稿の記載の目的を果たしたいと存じます。
1、その場所へ障害者などがどのようにして来られるか?動線をチェックしましょう。
2、チェックしたならば誘導表示の設置(点字ブロックも含む)ないし予算の許す限りのバリアフリー環境の整備を進めましょう。
3、手話のできる職員の配属を考えましょう。
4、車椅子利用者の目線になるべく近い状態で品物を陳列するなり様々な表示等を考えましょう。
5、車椅子(電動車椅子を含む)と健常者の事故が著しく増加しています。館内での車椅子利用者や健常者の車椅子への配慮など一定のルールを決めて啓蒙しましょう。
6、車椅子利用者のトイレを理想としては各フロア―に3箇所は設置したいものです。
7、脳卒中後遺症による障害者や脊髄損傷の人への様々な対応に熟知した職員の配属を考えましょう。
8、どんな障害者でも柔軟に対応できる職場のハード面をチャックしましょう。
9、障害者などは体力の欠如している場合が頻繁に見受けられるため、腰掛けて休憩できる箇所をたくさん設けるようにしましょう。
10、通路は車椅子同士がすれ違う事が出来るスペースを最低限確保しましょう。また手動式車椅子でのスロープの昇降は思いのほか体力を要します。スロープの勾配には十分な留意が必要となるでしょう。
11、職員の障害者などに対する接遇に関する研修は単発ではなく、恒常的に開催し啓蒙する必要性があるように思われます。健常者には想像も及ばない事が山積しており、単発の研修では身に付かないのではないかと考えます。
12、定期的に障害者などの声を傾聴する場所を設けるか常設しましょう。建設的な意見がもしあれば積極的に取り入れる方向で動きましょう。
13、障害者などの受け入れを積極的に考慮実践している組織である事を宣伝しましょう。
14、バリアフリー研修企画担当者は障害者などへの対応に熟知された方を講師に依頼し、その職場に沿った現実味のある内容にするため必ず事前に打ち合わせをしましょう。
 以上14点を提案させて頂きましたが、車椅子生活を強いられるのは明日の我が身かもしれません。もしそうなった時生活環境が自分の存在を拒絶してしまうような状況だとしたならばあなたはどうしますか?バリアーだらけの生活環境はもしかすると眼に見えない私達の心のバリアーがそうさせてしまったのかもしれません。こんな思いにかられる昨今です。